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骨盤前傾と骨盤後傾の違いとは?骨盤の回転と腰椎・股関節の関係を解説

ANATOMY / PELVIC MOVEMENT

骨盤が前に傾く「前傾」と、後ろに傾く「後傾」。この違いは、見た目の印象ではなく、骨盤の骨の目印がどちらへ動くかを考えると理解しやすくなります。


図1|骨盤と腰椎の位置関係をイメージした補助画像。実際の骨格や角度の判定には使用できません。

「骨盤が前傾しているから反り腰」「骨盤が後傾しているから腰痛になる」と言われたことはありませんか。これらは関連することもありますが、同じ意味ではありません。骨盤の向きには個人差があり、姿勢の一部分だけで身体の状態を判断するのは適切ではありません。

この記事でわかること

  • 骨盤前傾と骨盤後傾の正確な違い
  • 骨盤・腰椎・股関節がどう連動するか
  • 骨盤の角度と腰痛について、研究から言えること
  • 骨盤の状態を評価するときに重要な視点

骨盤前傾と骨盤後傾とは?まずは定義から

骨盤(こつばん)は、左右の寛骨(かんこつ)、中央の仙骨(せんこつ)、尾骨などから構成され、背骨と下肢の間で力を伝える役割を担っています。骨盤は歩行や前かがみ動作に伴って、前後・左右・回旋方向に動きます。

骨盤前傾・骨盤後傾は、身体を横から見たときの前後方向(矢状面)における骨盤の回転を表す用語です。なお、立った姿勢での「角度(位置)」と、動作中にどちらへ「回転するか」は分けて考える必要があります。

骨盤前傾(Anterior Pelvic Tilt/骨盤の前方回転)

骨盤が前方へ回転する動きです。骨盤前側の上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく/ASIS)は、後側の上後腸骨棘に対して相対的に前下方へ移動します。立位で腰の反りが強くなる動きと連動する場合があります。

骨盤後傾(Posterior Pelvic Tilt/骨盤の後方回転)

骨盤が後方へ回転する動きです。上前腸骨棘は相対的に後上方へ移動します。腰椎の前弯(ぜんわん)が小さくなる動きと連動する場合があります。

重要な注意点

後傾した姿勢で「上前腸骨棘が上後腸骨棘より必ず高い」とは限りません。骨の形状や元の姿勢に個人差があるため、前後傾は基準となる位置からの回転方向として理解することが大切です。

上前腸骨棘と上後腸骨棘で動きを見る

上前腸骨棘(ASIS)は腰の前側にある骨の突起、上後腸骨棘(PSIS)は骨盤の後側にある骨の目印です。理学療法や動作分析では、この2点を結んだ線と水平線の関係が、骨盤の位置を推定する一つの方法として使われます。


図2|基準姿勢から前傾・後傾へ動かした際のイメージ。骨盤の骨形状・角度は理解のために簡略化しています。

ただし、この線の角度は骨盤の骨格形状の影響も受けます。写真の見た目や骨の位置だけでは、実際の骨盤運動を正確に数値化できないことがあります。

前傾・後傾の違いを一目で比較

前傾:骨盤が前へ回転。前側の骨指標が相対的に前下方へ。
後傾:骨盤が後ろへ回転。前側の骨指標が相対的に後上方へ。

※静止したときの骨の絶対的な高さを示すものではありません。

骨盤の傾きと腰椎・股関節はどう連動する?


図3|骨盤の角度だけでなく、腰椎や股関節の運動も合わせて考えます。

腰椎の前弯と骨盤の傾きは、同じものではない

腰椎前弯(ようついぜんわん)は、腰の背骨が前方へ弧を描くカーブを指します。骨盤の前傾が増えると腰椎前弯も増える動きがよく見られますが、胸郭の位置、立ち方、股関節の角度などによって関係は変わります。骨盤前傾=反り腰と断定することはできません。

股関節の位置によって骨盤の動き方も変わる

骨盤と大腿骨のつながる場所が股関節です。脚を固定して骨盤を前後に動かすと、骨盤の回転は股関節の相対的な屈曲・伸展と関係します。一方、歩行やしゃがみ動作などでは、大腿骨も骨盤も動くため、単純な図と同じ角度になるとは限りません。

筋肉の役割は「単独の原因」ではなく力の組み合わせで考える

腸腰筋(ちょうようきん)や大腿直筋などの股関節屈筋群、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)、腹筋群、臀筋群、ハムストリングスなどが、姿勢や骨盤の動きに関与します。ただし、骨盤が前傾しているから腸腰筋が必ず短い/後傾しているから腹筋が必ず強いといった推測はできません。筋の状態は実際の動作や機能評価と組み合わせて判断します。

骨盤前傾・後傾と腰痛は関係する?研究からわかること

骨盤の角度と腰痛の関係は、研究でも一様な結果になっていません。2014年の系統的レビューでは、腰痛がある人とない人の立位骨盤傾斜角に明確な差は認められませんでした。一方、2024年の別の系統的レビュー・メタ解析では、腰痛群で骨盤傾斜の指標に小さな差が報告されました。ただし研究間のばらつきが大きく、著者らは断定的な結論を避けています。

研究の読み方

「骨盤の角度と腰痛に関連がある可能性」と、「骨盤の角度が腰痛を引き起こす」という因果関係は別です。痛みの評価には症状の経過、負荷がかかる動作、可動域、筋機能などを総合する必要があります。

したがって、骨盤が前傾・後傾していること自体を病気のように扱ったり、万人共通の「正しい角度」へ戻せば痛みが解決すると説明したりすることは避けるべきです。

身体を評価するときに確認したい4つの視点

01|安静時の姿勢

立位と座位で骨盤・胸郭・腰椎の位置がどう変わるかを確認する。

02|動作時の変化

前屈・後屈・しゃがみ動作などで、骨盤と股関節がどの程度協調して動くかを見る。

03|症状との関係

痛みの有無、出現する動作、しびれや筋力低下など、姿勢以外の情報も確認する。

04|生活・運動背景

仕事や運動量、休息、負荷のかかる動作などを合わせて考える。

これは骨盤の「形」を評価するだけでなく、動きと症状の関係をみるという視点です。身体の傾きが気になる方も、角度だけにとらわれる必要はありません。

医療機関での確認が優先される場合

強い外傷後の痛み、急速に進む脚の脱力、会陰部の感覚異常、排尿・排便の異常などがある場合は、整体での姿勢確認よりも速やかな医療機関での評価が必要です。

骨盤前傾・骨盤後傾についてよくある質問

Q. 骨盤前傾と反り腰は同じ意味ですか?

A. 同じではありません。骨盤前傾は骨盤の回転方向、反り腰は腰のカーブが強く見える状態を指します。関連することはありますが、一致するとは限りません。

Q. 骨盤後傾なら、上前腸骨棘は後側の骨より上にありますか?

A. 必ずしもそうではありません。骨盤の形には個人差があり、後傾は基準位置から後方へ回転する方向を示します。

Q. 骨盤は少し前傾している方が正常ですか?

A. 軽度の前傾を示す人もいますが、骨格形態や測定方法によって値は異なります。一つの角度を全員の正解とみなすことはできません。

Q. 骨盤の角度を写真だけで正確に判断できますか?

A. 写真は姿勢の変化を観察する補助になりますが、骨の目印を確実に特定することは難しく、単独で正確な角度や病態を判断できません。

Q. 前傾や後傾を見つけたら、必ず矯正が必要ですか?

A. いいえ。角度だけを理由に施術の必要性は決まりません。症状、動作上の困りごと、本人の目的などを合わせて判断することが重要です。

Q. 骨盤後傾を改善する運動についてはどこで読めますか?

A. このページは前傾・後傾の違いを解説しています。運動や日常の工夫は既存の「骨盤後傾」コラムで紹介しています。

まとめ|骨盤の傾きは「方向」と「動き」を理解する

骨盤前傾は骨盤が前へ回転する動き、骨盤後傾は後ろへ回転する動きです。両者の違いを骨盤の骨指標で理解しつつ、腰椎・股関節との連動や個人差まで考えることで、姿勢をより正確に捉えられます。

大切なのは、骨盤の角度だけで身体の不調を決めつけず、動作とお悩みに合わせて評価することです。骨盤がどう動いているのか気になる方は、専門家に相談する際も、痛む動作や日常生活で困る場面を一緒に伝えると役立ちます。

主な参考文献・資料

※本文中に大量の外部リンクを置かず、関連する査読論文をまとめています。各研究結果は対象者・測定法による違いがあります。

  1. Lewis CL, et al. The Human Pelvis: Variation in structure and function during gait. Anat Rec. 2017. DOI: 10.1002/ar.23552
  2. Clinical Measures of Pelvic Tilt in Physical Therapy. Int J Sports Phys Ther. 2021. DOI: 10.26603/001c.27978
  3. Variation in Pelvic Morphology May Prevent the Identification of Anterior Pelvic Tilt. J Man Manip Ther. 2008. PMCID: PMC2565125
  4. Laird RA, et al. Comparing lumbo-pelvic kinematics in people with and without back pain: a systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2014. PMCID: PMC4096432
  5. Postural asymmetry in low back pain – a systematic review and meta-analysis of observational studies. 2024. PMID: 39166267

記事内容の確認

山本 政幸の写真

山本 政幸

柔道整復師・鍼灸師

株式会社G-STYLE代表

グレフル鍼灸接骨院 整体院 心斎橋 院長

内容確認日:

※確認者の資格・役割は医学的な診断や医師による監修を意味しません。医学的な根拠は本文の参考資料をご確認ください。

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