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巻き肩と肩甲骨の位置関係とは?前に出る肩の仕組みを解剖学的に解説

専門解説 / 肩甲骨の解剖学・身体の動き

「巻き肩になると肩甲骨が外に開く」と聞いたことはありませんか? 実際には、肩甲骨は背中の上を単純に左右へ動くだけではありません。胸郭(きょうかく:肋骨などで構成される胸の骨格)に沿って、複数の方向へ立体的に動いています。

この記事の結論

巻き肩のように肩が前へ出て見える姿勢には、肩甲骨の外転(前方突出)・前傾・内旋や、上腕骨の向き、胸椎の姿勢などが複合的に関係します。ただし、肩甲骨の位置には個人差があり、一つの方向に動いていることだけで巻き肩や痛みを診断することはできません。大切なのは、静止した形だけでなく、腕を動かしたときの肩甲骨の働きまで確認することです。

肩甲骨は胸郭の上で動く骨

肩甲骨は背中の左右にある三角形に近い形の骨です。腕の骨である上腕骨とともに肩関節を構成し、腕を上げたり前に伸ばしたりするときには、肩甲骨自身も位置と角度を変えます。

肩甲骨の前面と肋骨でできた胸郭との間の動きは、肩甲胸郭運動と呼ばれます。これは独立した一般的な関節面だけでできているのではなく、周囲の筋肉や軟部組織が協調して生み出す動きです。


図1|背中側から見た肩甲骨の位置の模式図。外転(前方突出)を背面から簡略化したものです。実際の肩甲骨は肋骨の丸みに沿って3次元的に動くため、この図だけで正常・異常を判定することはできません。

さらに、肩甲骨が鎖骨とつながる部分の動きも重要です。肩甲骨の位置は、肩甲骨そのものだけでなく、鎖骨・胸郭・上腕骨が一緒に動くことで変化します。

巻き肩と関係する「外転・前傾・内旋」の違い

肩が前に出て見えるときに考えられる肩甲骨の動きは、一種類ではありません。代表的な3方向を整理します。


図2|肩甲骨の動きの名称と方向。複数の動きが同時に起きるため、一つだけを切り出して説明した模式図です。

01 / PROTRACTION外転(前方突出)

肩甲骨が背骨から離れる方向へ移動し、肋骨の曲面に沿って前外側へ回り込む動き。腕を前に伸ばす場面でも自然に起こります。

02 / ANTERIOR TILT前傾

肩甲骨が前後方向に傾く動き。模式的には肩甲骨上部が前方へ、下角が後方へ向く方向です。

03 / INTERNAL ROTATION内旋

肩甲骨が胸郭に対して縦軸周りに回る動き。腕の骨そのものが内側へ回る「上腕骨内旋」とは区別します。

ここで重要なのは、外転・前傾・内旋がすべて同じ程度に増えるとは限らないという点です。姿勢や運動課題によって組み合わせが変わり、人によって見え方も異なります。

肩が前に出るのは、肩甲骨だけの問題ではない


図3|肩甲骨、上腕骨、鎖骨、肋骨、背骨のつながりをイメージするための解剖学的イラスト。個人の診断画像や、角度を正確に比較した資料ではありません。

上腕骨が内側を向く場合

上腕骨の内旋とは、腕の骨が自身の長軸に沿って内側へ回る動きです。肩甲骨の前方移動と同時に起こることもありますが、上腕骨の内旋と肩甲骨の内旋は別々の運動です。「肩が内巻きに見える」ことだけでは、どちらが主に関係しているか判断できません。

背中が丸くなる場合

胸椎(きょうつい:背骨の胸の部分)が丸くなる姿勢では、肩甲骨を支える胸郭の向きも変わります。胸椎の姿勢と肩甲骨の向き、腕の可動域には関連が報告されていますが、すべての人に同じ変化が起きるわけではありません。

姿勢を比較するときの注意点
胸を強く張ることや肩甲骨を無理に寄せ続けることが、常に正しい姿勢とは限りません。肩甲骨には、腕の動きに合わせて前に出る・上に回るなどの可動性も必要です。

肩甲骨の動きを調整する代表的な筋肉

肩甲骨は複数の筋肉に支えられています。筋肉の役割を知ると、同じ「巻き肩に見える姿勢」でも、確認すべき部位が一人ひとり違うことが理解しやすくなります。

  • 前鋸筋(ぜんきょきん):肩甲骨を胸郭に沿わせ、外転や上方回旋を助けます。腕を前へ伸ばす動作にも関わります。
  • 僧帽筋(そうぼうきん):上部・中部・下部で働きが異なり、肩甲骨の挙上、内転、上方回旋などを協調して支えます。
  • 菱形筋(りょうけいきん):肩甲骨の内転や下方回旋に関わり、肩甲骨の位置を保つ働きを助けます。
  • 小胸筋(しょうきょうきん):肋骨と烏口突起(うこうとっき:肩甲骨の前方にある突起)を結ぶ筋肉で、肩甲骨の前傾などに関係します。

筋肉の硬さや筋力だけで姿勢が決まるわけではありません。筋肉同士の協調、仕事や生活での動作、関節の可動性などを含めて考えることが大切です。

肩甲骨の位置だけで巻き肩や痛みを判断できない理由

研究では、肩甲骨の位置や動きに個人差があり、症状のない人にも左右差や特徴的な動きが見られることが報告されています。肩甲骨の動きの違いが、必ずしも痛みの原因だと断定できるわけではありません。

そのため専門家が姿勢を見るときは、肩甲骨の位置だけではなく、次のような点を合わせて確認します。

  • 肩・首・背中に痛みやしびれがあるか
  • 腕を上げる、前に伸ばすなどの動作で何が起こるか
  • 左右の肩甲骨がどのように動くか
  • 胸椎・胸郭・肩関節の動きに偏りがあるか
  • 普段の生活でどの姿勢や動作が多いか

なお、しびれ、明らかな筋力低下、転倒後の痛み、夜間の強い痛みなどがある場合は、姿勢だけの問題と判断せず、整形外科などの医療機関で相談してください。

よくある質問

Q. 巻き肩は肩甲骨が外に開いている状態ですか?

肩甲骨の外転(前方突出)が関連することはありますが、それだけではありません。肩甲骨の前傾・内旋、上腕骨の向き、胸椎の姿勢なども組み合わさるため、ひとつの特徴だけで判断しないことが重要です。

Q. 肩甲骨を寄せていれば巻き肩はよくなりますか?

肩甲骨を寄せる動作も必要な運動の一つですが、常に寄せた状態に固定する必要はありません。肩甲骨は腕の動きに応じて外転や上方回旋も行うため、自然に動けることが大切です。具体的なセルフケアは関連記事で解説しています。

Q. 肩甲骨の左右差があれば異常ですか?

左右差は症状のない人にも見られます。左右差の大きさだけでは異常とは断定できず、痛み・可動域・日常生活への影響などと合わせて評価します。

Q. 肩甲骨はがしで肩甲骨の位置は変わりますか?

施術後に動かしやすさや姿勢の感じ方が変わることはありますが、その効果や持続には個人差があります。肩甲骨の位置を一度で固定・矯正できるものではなく、身体の評価と必要に応じた運動・生活習慣の見直しが大切です。

関連記事|目的に合わせて詳しく知る

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参考資料(主に査読付き論文)

  1. Struyf F, et al. Scapular positioning and movement in unimpaired shoulders, shoulder impingement syndrome, and glenohumeral instability. 2011. PubMedで確認
  2. Kibler WB, et al. Clinical implications of scapular dyskinesis in shoulder injury: 2013 consensus statement. 論文を確認
  3. Is it Time to Normalize Scapular Dyskinesis? A Systematic Review. 2023. PubMedで確認

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山本 政幸

柔道整復師・鍼灸師

株式会社G-STYLE代表

グレフル鍼灸接骨院 整体院 心斎橋 院長

※確認者の資格・役割は医学的な診断や医師による監修を意味しません。医学的な根拠は本文の参考資料をご確認ください。

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