GREFUL KNOWLEDGE 健康寿命・予防
50〜60代の筋力低下はサルコペニア?確認の目安と食事・運動
greful KNOWLEDGE / HEALTH & PREVENTION
「以前より荷物が重く感じる」「立ち上がるのがおっくうになった」「体重は変わらないのに、筋肉が減った気がする」。50〜60代で力の入りにくさに気づいたとき、気になる言葉の一つがサルコペニアです。
この記事では、サルコペニアと一般的な筋力低下の考え方、医療機関での評価、食事・運動の始め方を整理します。自己チェックの数値だけで病名を決めず、今の状態に合った対策を選ぶための専門解説です。
この記事で押さえたい3点
- 力が弱くなった原因は、加齢だけとは限りません。痛み、活動量、栄養、病気なども含めて確認します。
- サルコペニアの評価では、筋力と筋肉量を組み合わせます。握力や家庭用体組成計の数字一つで、自己診断はできません。
- 対策は、必要な医療と、食事・筋力トレーニング・日々の活動を組み合わせること。負荷をかけるだけでなく、回復する時間も確保しましょう。
サルコペニアとは?50〜60代も関係する?
サルコペニアは、筋肉の量と力が低下した状態を指し、高齢になる前から筋肉の健康を考えることが大切です。腕や脚の細さ、体重の変化だけで判断するものではありません。
アジアサルコペニアワーキンググループ2025年基準(AWGS 2025)では、筋肉の健康に懸念のある50〜64歳も評価の対象に含まれました。従来の「高齢になってから考えること」という印象にとらわれず、日常の変化に目を向けたいところです。
ただし、50代になったら全員がサルコペニアになる、という意味ではありません。筋力の変化、食事、活動量、病気や服薬などを確認し、必要に応じて医療機関で評価します。

ロコモティブシンドローム・フレイルとの違い
サルコペニアは、主に筋肉の量と力に着目します。ロコモティブシンドロームは、骨・関節・筋肉・神経などの運動器の問題によって、移動する機能が低下した状態を指します。フレイルは、身体に加え、気持ちや社会とのつながりなども含めて考える概念です。
これらは重なり合う場合がありますが、同じ言葉ではありません。つまずきや階段のつらさを中心に知りたい方は、ロコモ予防と歩く力の解説も参考にしてください。
筋力が落ちる原因は、年齢だけ?
年齢による変化に加えて、活動量の低下、食事の不足、病気や痛みなども関わります。「もう年だから」と決めつけると、確認した方がよい原因を見逃すことがあります。
動く機会が減り、筋肉への負荷が少なくなる
仕事や生活が変わって座る時間が増えたり、痛みを避けて外出しなくなったりすると、筋肉を使う機会も減ります。入院や体調不良の後に、以前の活動量へ戻れていない場合もあります。
筋肉は、使う機会と適切な負荷に応じて働きが変わります。身体をほとんど動かさない期間が続いた後は、急に以前と同じ重さ・回数へ戻すより、今できる動きを確かめることから始めましょう。
食べる量や、食事の組み合わせが変わる
食欲が落ちた、忙しくて食事を抜く、体重を減らそうと主食も主菜も極端に減らす、といった状況では、筋肉の健康に必要なエネルギーや栄養が不足することがあります。噛みにくさや飲み込みにくさが、食べる量に影響している場合もあります。
一方、体重が変わらなくても、体脂肪と筋肉の内訳が変わっている可能性があります。体格が大きいことだけで筋肉は十分と判断せず、筋力や日常動作も合わせて考えます。
痛みや病気で「力を出しにくい」こともある
膝や肩、手指などの痛みがあると、筋力を発揮しにくくなる場合があります。また、神経や筋肉、内科的な病気などの評価が必要なこともあります。力が入りにくい部位、左右差、しびれ、変化の速さは、受診時に伝えたい情報です。
動作がしやすくなったことと、筋肉量が増えたことも分けて考えます。一度の施術や運動後の感覚だけで、サルコペニアが改善したとは判断できません。
筋トレより先に、受診を考えたい変化
意図しない体重減少、進んでいる脱力、しびれ、食べにくさなどがある場合は、運動やプロテインを増やす前に医療機関へ相談してください。原因が分からない変化は、かかりつけ医や内科が相談の入口になります。局所の痛みや動かしにくさは整形外科でも相談できます。
相談して確認したい状況
- 食事量や体重が意図せず減り、疲れやすさも続いている
- 片側の手足だけ力が入りにくい、しびれがある、症状が進んでいる
- 以前できた日常動作が難しくなった、転倒を繰り返す
- 噛む・飲み込むことが難しくなり、食べられるものが減っている
- 痛みや息切れ、持病のために、活動が大きく制限されている
受診前には、「いつから」「どの動作で」「左右の違い」「体重と食事量の変化」「持病と薬」を短くメモすると、相談しやすくなります。検査や薬の確認をせず、筋力低下をすべてサルコペニアと扱うことはできません。
突然の片側の脱力や、言葉の異常は119番
片側の手足に急に力が入らない、顔がゆがむ、ろれつが回らないなどの変化は、脳卒中の可能性があります。運動不足と考えて様子を見ず、119番で救急車を呼んでください。一度よくなっても、そのままにしないことが大切です。
握力・筋肉量は、どう評価する?
医療機関などで、筋力と筋肉量を組み合わせて評価します。2025年の基準では「低い筋力」と「少ない筋肉量」の両方が診断の中心となり、握力の数値だけで確定するわけではありません。
握力は、年齢別の基準と測定条件を合わせて見る
アジアサルコペニアワーキンググループ2025年基準(AWGS 2025)に示された、握力の基準の一部は次のとおりです。
画面が狭い場合、表は左右にスクロールできます。医療者による評価の基準の抜粋です。
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 50〜64歳 | 34kg未満 | 20kg未満 |
| 65歳以上 | 28kg未満 | 18kg未満 |
基準値は、自己診断のための合否判定や、全員が目指す運動目標ではありません。65歳の誕生日を境に、身体の力が急に変わるという意味でもありません。医療者が、年齢と症状、筋肉量などを合わせて評価する際に使います。
測定機器、姿勢、手指の痛みなども結果に影響し得るため、測定方法をそろえたうえで解釈します。家庭用の握力計の結果が気になる場合は、その測り方と数値を持って相談してください。強く握ることに痛みがある方が、繰り返し無理をする必要はありません。
家庭用体組成計の「筋肉量」だけでは決められない
診断のための筋肉量の評価には、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)や、生体電気インピーダンス法(BIA法)などを用います。腕と脚の筋肉量を調べ、身長や体格も考慮します。
家庭用体組成計に表示される「筋肉量」は、こうした評価で使う値と、そのまま同じとは限りません。機種や測定条件も含めて確認し、一度の増減で病名や運動の成果を判断しないようにしましょう。
歩行の速さや立ち上がりなどの身体機能も、生活への影響や対策後の変化を把握する大切な評価です。これらの動作ができれば、病気がないと証明できるわけではありません。
筋肉を保つ食事と、たんぱく質の目安
食事全体の量を確保し、たんぱく質を含む主菜を各食に組み合わせることから考えます。たんぱく質だけを足しても、食事や活動など他の条件が整わなければ、期待する変化につながるとは限りません。
一般的な推奨量と、治療で必要な量を分ける
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に示された、たんぱく質の1日当たりの推奨量の抜粋です。
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 50〜64歳 | 65g/日 | 50g/日 |
| 65〜74歳 | 60g/日 | 50g/日 |
表の数値は、肉や魚そのものの重さではなく、含まれるたんぱく質の量です。また、サルコペニアと診断された方の栄養療法や、腎臓の病気がある方への個別の指示ではありません。体格、食事量、病気、治療内容に合わせた量は、医師や管理栄養士へ相談してください。
朝・昼・夕の「主菜があるか」を見直す
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など、食べられるものを組み合わせます。朝食が飲み物だけ、昼食が麺だけになりやすい方は、まず食事の内容を振り返ってみましょう。
- 朝:主食に加え、卵やヨーグルトなど、食べやすいものを選ぶ
- 昼:麺やご飯だけで終えず、魚・肉・豆腐などのおかずを組み合わせる
- 夕:一つの食材に偏らず、主菜・副菜・主食をそろえる
これは食事を考える例であり、上の組み合わせや写真の献立が、全員の必要量を満たすという意味ではありません。食べられる量が少ない場合や、体重が落ちている場合は、間食や補助食品の使い方も含め、専門職と相談しましょう。

プロテインを飲めば十分、とは考えない
プロテインなどの補助食品は、普段の食事では補いにくい場合の選択肢になります。まず食事内容を確認し、必要性と量を考えます。飲むだけで筋肉が増える、サルコペニアが治ると考えて、食事や運動の代わりにしないでください。
腎機能の低下を指摘されている方、食事制限がある方は、自己判断でたんぱく質を増やさず、主治医へ確認します。体重を減らす必要がある場合も、食べる量を極端に削る方法ではなく、筋肉の状態と持病を踏まえて進めることが大切です。
筋トレは、どのくらい・何から始める?
厚生労働省の一般的な健康づくりの目安は、筋力トレーニングを週2〜3日です。歩くなどの活動と組み合わせ、同じ筋肉に強い負荷をかけ続けるのではなく、休む日も考えます。
歩くことに加え、筋肉へ負荷をかける動きも
散歩などの習慣は大切ですが、筋肉に適した負荷をかける運動も組み合わせて考えましょう。自分の体重を使う動きや、器具を使う運動などから、痛み、体力、運動経験に合うものを選びます。
慣れてきたら、回数だけでなく動作や負荷の調整が必要になる場合があります。ただし、診断を受けた方や持病・骨折歴がある方は、医療機関からの指示を優先します。「週2〜3日」という頻度も、一律の治療プログラムを示すものではありません。
動きを覚える少量の例|椅子に座って膝を伸ばす
太ももの前側を使う動きの例です。急な脱力や強い痛み、繰り返す転倒がある方は、先に受診してください。安定して座れ、運動制限のない方が、痛みのない範囲で試すことを想定しています。
- キャスターがなく、動かない椅子に座り、背もたれなどで姿勢を安定させます。両足を床につけます。
- 手は肘掛けや座面に置き、片方の膝を、痛みのない範囲でゆっくり伸ばします。太ももは座面に置いたままにします。
- 上体を反らせたり反動をつけたりせず、ゆっくり足を戻します。息を止めないようにしてください。
開始の例は、左右それぞれ3回ずつです。少量で動作を覚える例であり、この回数だけで筋肉量や筋力が十分に改善すると実証された処方ではありません。痛み、ぐらつき、強い疲れがあれば中止し、続ける量や負荷は状態に応じて相談してください。

運動前後の体調と、回復する時間を確認する
強い筋肉痛や疲れが残る日に、同じ運動量を無理に繰り返す必要はありません。胸の痛み、めまい、冷や汗、いつもと違う強い息切れ、関節や筋肉の強い痛みが出たら中止します。症状が強い・続く場合は、医療機関へ相談してください。
骨密度の低下や骨折歴がある方は、負荷の選び方にも配慮が必要です。骨粗しょう症予防と骨密度検査の解説もご覧ください。
日常の活動と、続けるための記録
筋トレをする日だけでなく、普段の生活の中で動く機会と、食べる習慣を整えましょう。長く座り続ける時間が多い方は、立てる範囲で短い用事をつくるなど、活動をこまめに取り入れます。
記録は「運動の回数」だけでなく、「何が楽にできたか」「翌日に痛みや疲れが残ったか」「食事を抜いていないか」を簡単に残すと、調整の手がかりになります。体重は参考になりますが、減ったことを無条件によい変化とせず、意図した変化かを確認してください。
握力や筋肉量を測り直す時期は、評価を行った医療機関などへ相談します。一時的な数値の上下を追いかけるより、日常生活の変化と合わせて、継続して見ていくことが大切です。
grefulで相談できる身体のケア
「動きにくさがあり、どこからセルフケアを始めればよいか分からない」という相談を伺います。受診状況、痛み、持病、運動制限、普段の活動を確認し、対応できる範囲で日常動作や身体のケアを考えます。
関節の動きや立ち座りなど、安全に見られる動作を確認することは、負担のかかり方や取り入れやすい動きを整理する手がかりになります。ただし、整体で病名を確定したり、神経や内科的な病気がないと判断したりすることはできません。
サルコペニアが疑われる方、意図しない体重減少や進む脱力がある方には、医療機関での確認を優先していただきます。整体の手技だけで筋肉量が増える、サルコペニアが治る、健康寿命が延びるとは断定できません。必要な医療・食事・運動の中に、身体のケアをどう取り入れるかを一緒に考えます。
当院の施術方針については、初めての方へのご案内をご覧ください。
よくある質問
50代でも、サルコペニアを調べることがありますか?
あります。2025年のアジアの基準では、筋肉の健康に懸念のある50〜64歳も評価の対象です。年齢だけで病名が決まるわけではなく、生活の変化や持病なども踏まえて確認します。
握力が基準より低ければ、サルコペニアですか?
握力だけでは確定できません。筋肉量の評価や、測定条件、痛み、病気の影響なども確認します。基準を下回ったことが気になる場合は、測定結果と症状を医療機関へ伝えましょう。
体重が普通でも、筋肉が少ないことはありますか?
あります。体重だけでは、脂肪と筋肉の内訳や筋力を把握できません。家庭用体組成計の値一つに頼らず、力の出しにくさや日常動作の変化も含めて評価します。
毎日歩いているので、筋トレはしなくてもよいですか?
歩行に加えて、筋肉に負荷をかける運動も検討します。どの動きをどの程度行うかは、体力や痛み、持病に合わせて選び、休息も確保してください。
筋肉のために、毎日プロテインを飲むべきですか?
全員に必要なわけではありません。食事でとれている量と、必要量を確認して考えます。食事量が少ない方や病気のある方は、医師・管理栄養士などへ相談し、自己判断で大量に足さないようにしましょう。
まとめ|筋肉の健康は、力・食事・動きから考える
50〜60代で筋力の変化が気になったら、まずは原因を一つに決めつけず、必要な評価と取り組みを整理しましょう。
- 変化を伝える:いつから、どの動作で困るか、食事量・体重・持病も確認する
- 評価を受ける:筋力と筋肉量、病気や痛みの影響を合わせて考える
- 無理なく続ける:食事、筋トレ、日々の活動と休息を組み合わせる
短期間の数値だけを目標にせず、買い物、仕事、趣味など、続けたい生活のために筋肉の健康を考えていきましょう。
医学・学術参考資料
学会・厚生労働省・国立研究機関の資料を基に整理しました。診断基準の数値、一般的な推奨量、この記事の少量の開始例を区別しています。
- 日本サルコペニア・フレイル学会「新しいサルコペニアの診断基準のお知らせ」(PDF)確認できること:アジアサルコペニアワーキンググループ2025年基準(AWGS 2025)の対象・握力の基準・筋力と筋肉量の組み合わせ。
- 日本サルコペニア・フレイル学会「なぜ今、Muscle Healthなのか」(PDF、2026年8月)確認できること:中年期から筋肉の健康を考える意義と、早期の評価・対策。
- 日本サルコペニア・フレイル学会「フレイルとは・サルコペニア」確認できること:フレイルの多面的な特徴、筋肉に関わる要因、運動と栄養。診断部分は上の2025年基準を参照。
- 国立長寿医療研究センター「だるさ、体重減少の原因は何?」確認できること:体重減少や疲れやすさで医療機関へ相談する意味、病気・栄養・運動の確認。
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)たんぱく質」(PDF)確認できること:たんぱく質の役割、性・年齢別の推奨量と、摂取基準の考え方。
- 厚生労働省「筋力トレーニングについて」確認できること:週2〜3日の一般的な目安、負荷の調整、休息と個人差への配慮。
- 長寿科学振興財団「レジスタンス運動の効果と方法」確認できること:筋肉に負荷をかける運動、座って膝を伸ばす動きの例。記事内の支え方と3回の開始例は、資料の手順・標準量とは分けた編集上の例です。
- 厚生労働省「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」確認できること:持病・服薬・体調の事前確認、運動中や運動後の確認。
- 国立循環器病研究センター「脳卒中」確認できること:突然の脱力・顔や言葉の異常と、救急対応の重要性。
記事内容の確認
山本 政幸
柔道整復師・鍼灸師
株式会社G-STYLE代表
グレフル鍼灸接骨院 整体院 心斎橋 院長
内容確認日:
※確認者の資格・役割は医学的な診断や医師による監修を意味しません。医学的な根拠は本文の参考資料をご確認ください。


