厳しい暑さが続くなか、熱中症対策として注目されているのが「プレクーリング」です。プレクーリングとは、屋外での活動や運動、仕事を始める前に、あらかじめ身体を冷やしておく方法です。「暑くなってから冷やす」のではなく、暑い環境へ出る前から身体に熱をためにくい状態をつくることがポイントです。通勤や買い物、屋外での仕事、スポーツ、旅行、イベントなど、暑い場所で過ごす予定がある日は、出発前のひと工夫が熱中症予防につながります。ただし、プレクーリングをしていれば、どのような暑さの中でも安全に活動できるわけではありません。暑さ指数の確認、エアコンの使用、こまめな休憩、水分・塩分補給などと組み合わせることが大切です。

プレクーリングとは、英語の「Pre-cooling」に由来する言葉で、暑い場所で活動する前に身体を冷やしておく熱中症対策です。厚生労働省は、プレクーリングについて「あらかじめ体温を下げておき、作業中に体温が上がるのを緩やかにする方法」と紹介しています。
冷やし方は、大きく次の2種類に分けられます。
・身体の表面から冷やす「外部冷却」
・冷たい飲み物などで身体の内側から冷やす「内部冷却」
厚生労働省の資料でも、手足を冷やす、ミストや風を利用する、クールベストを着る、アイススラリーを飲むなどの方法が紹介されています。
人の身体は、暑い環境や運動によって体温が上がると、汗をかいたり、皮膚の血流を増やしたりして熱を外へ逃がそうとします。しかし、気温や湿度が高い日、風が弱い場所、日差しや地面からの照り返しが強い環境では、身体の熱を十分に逃がせないことがあります。プレクーリングによって活動前から身体を冷やしておくと、深部体温の上昇を抑えるための「余裕」をつくり、活動中の体温上昇を緩やかにすることが期待できます。厚生労働省も、暑さ指数が高い環境で、作業量を減らしたり通気性のよい服装へ変更したりすることが難しい場合には、作業開始前や休憩中のプレクーリングを検討するよう紹介しています。
外出の直前まで暑い部屋で過ごしていると、外へ出る前から身体に熱がたまってしまいます。外出や運動の準備は、できるだけエアコンの効いた涼しい部屋で行いましょう。着替え、荷物の準備、靴を履くなどの時間も、涼しい環境で過ごすことが大切です。環境省は、熱中症警戒アラートが発表された日は、まずエアコンなどを適切に使用し、涼しい環境で過ごすよう呼びかけています。
外出や運動の前に、冷たい水や飲料を少しずつ飲む方法です。冷たい飲料には、水分補給と身体の内側からの冷却を同時に行いやすいという利点があります。大量に汗をかくことが予想される場合は、水だけでなく、汗で失われる塩分も補給できる飲料を活用しましょう。のどが渇いたと感じた時点で、すでに脱水が始まっている場合があります。暑い日は、のどの渇きを待たず、外出前からこまめに補給することが重要です。一度に大量に飲むのではなく、体調に合わせて少しずつ飲みましょう。
アイススラリーとは、細かな氷の粒と液体が混ざった、シャーベット状の飲料です。液体だけの冷たい飲み物とは異なり、氷が溶ける際にも熱を吸収するため、身体の内部から冷やす方法として、スポーツや暑い職場などで活用されています。厚生労働省の熱中症予防資料でも、アイススラリーは内部から身体を冷やすプレクーリングの一例として紹介されています。冷たいものを飲むとお腹が痛くなる方や、胃腸の調子が悪い方は、無理にアイススラリーを飲む必要はありません。通常の冷たい飲料を少しずつ飲む方法でも構いません。
冷たい水に手をつけたり、足を冷やしたりする方法もあります。洗面器やバケツに冷たい水を入れて手足をつけるほか、冷たいタオルを手や足に当てる方法なら、自宅でも比較的簡単に行えます。厚生労働省は、手足の冷却を身体の外部から行うプレクーリングの方法として紹介しています。冷たさによる痛みや強いしびれを感じる場合は、すぐに中止してください。
水で冷やしたタオルを首周りに当てたり、クールベストを着用したりする方法です。スポーツ前や屋外作業の前など、ある程度長く暑い場所で活動する場合に取り入れやすい方法です。日本スポーツ協会も、運動前のプレクーリングとして、身体を水に浸す、クーリングベストを着用する、冷たい飲料を取るなどの方法を紹介しています。保冷剤を使用するときは、凍ったものを直接肌に当て続けず、タオルなどで包んで使用しましょう。
出発まではエアコンの効いた部屋で過ごし、冷たい飲み物を少しずつ飲みます。冷たいタオルや持ち運べる飲料を用意し、日傘や帽子も忘れないようにしましょう。外出時間を調整できる場合は、日差しの強い時間帯を避けることも大切です。
運動前から冷たい飲料を取り、涼しい場所で準備を行います。競技や練習内容に合わせて、クールベストや冷たいタオルも活用しましょう。プレクーリングをした場合でも、暑さ指数が高い日は運動量を減らす、休憩回数を増やす、中止や延期を検討する必要があります。環境省の運動指針では、暑さ指数が28以上31未満では激しい運動を中止し、31以上では運動を原則中止としています。
仕事を始める前に、冷房の効いた休憩所で身体を冷やし、水分・塩分を補給しておきましょう。作業着や保護具によって熱がこもりやすい場合は、クールベストやアイススラリーなども選択肢になります。休憩時間にも涼しい場所へ移動し、冷却と水分補給を繰り返すことが大切です。
屋外イベントやテーマパーク、スポーツ観戦などでは、長時間の移動や待ち時間によって身体に熱がたまりやすくなります。会場へ着いてから対策するのではなく、ホテルや自宅を出る前から身体を冷やし、冷たい飲み物を持って出かけましょう。「まだ汗をかいていないから大丈夫」ではなく、暑さにさらされる前から準備することがポイントです。
プレクーリングは、熱中症対策の一つです。
次の対策も必ず組み合わせましょう。
・当日の暑さ指数を確認する
・熱中症警戒アラートを確認する
・エアコンを適切に使用する
・のどが渇く前に水分を補給する
・大量に汗をかく場合は塩分も補給する
・日傘や帽子で直射日光を避ける
・通気性のよい服装を選ぶ
・こまめに涼しい場所で休憩する
・睡眠不足や体調不良の日は無理をしない
・危険な暑さの日は外出や運動を中止する
熱中症警戒アラートが発表されている場合は、「プレクーリングをしたから外出できる」と考えず、外出・運動・イベントの中止や延期も検討してください。環境省も、危険な暑さの際には、涼しい環境以外での運動等を中止するよう呼びかけています。
次のような方は、暑さの影響を受けやすいため、特に注意が必要です。
・高齢者
・乳幼児や子ども
・暑さに慣れていない方
・睡眠不足や疲労がある方
・発熱、下痢、食欲不振など体調不良がある方
・屋外で長時間活動する方
・防具や作業着を着用する方
・持病がある方
・利尿薬などの薬を服用している方
持病がある方や子どもの熱中症対策については、事前にかかりつけ医へ相談しておくことが推奨されています。
熱中症では、次のような症状がみられることがあります。
・めまい、立ちくらみ
・こむら返り、筋肉痛
・手足のしびれ
・頭痛
・吐き気、嘔吐
・強いだるさ
・集中力や判断力の低下
・受け答えや会話がおかしい
・まっすぐ歩けない
・けいれん
・意識がない
・身体が異常に熱い
軽い症状であっても、まずは涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめて身体を冷やしましょう。意識がはっきりしており、自分で飲める場合は、水分と塩分を少しずつ補給します。自分で水分を飲めない、吐いてしまう、症状が改善しない場合は、医療機関を受診してください。受け答えがおかしい、普段どおりに歩けない、けいれん、意識障害などがある場合は、ためらわずに119番へ連絡してください。消防庁も、このような明らかな異常がある場合は、速やかに救急車を要請するよう呼びかけています。意識がおかしい人や自力で飲めない人に、無理に水分を飲ませてはいけません。
厳密な時間を決めるよりも、外出や運動の準備を始める段階から、涼しい室内で過ごすことが大切です。
着替えや荷物の準備をしながら冷たい飲み物を少しずつ取り、暑い場所へ出る直前まで身体に熱をためないようにしましょう。
冷たい飲料を取ることは、身体の内側から冷やすプレクーリングの一つです。
ただし、冷たい水を飲んだだけで熱中症を完全に予防できるわけではありません。休憩、日差し対策、暑さ指数の確認なども必要です。
首を冷やすことは外部冷却の一つですが、首だけを冷やせば安全というわけではありません。
涼しい環境で過ごす、手足を冷やす、冷たい飲み物を取るなど、複数の対策を組み合わせましょう。
アイススラリーがなくても問題ありません。
エアコンの効いた部屋で過ごす、冷たい飲料を飲む、冷たいタオルや水で手足を冷やすなど、自宅でできる方法があります。
プレクーリングをしても、危険な暑さの中で安全に運動できるとは限りません。
暑さ指数が高い場合や熱中症警戒アラートが発表されている場合は、運動の中止、延期、内容変更を優先してください。
プレクーリングとは、外出、運動、仕事などを始める前に身体を冷やし、活動中の体温上昇を緩やかにする熱中症対策です。
具体的には、次のような方法があります。
・涼しい部屋で外出準備をする
・冷たい飲み物を少しずつ飲む
・アイススラリーを活用する
・冷たい水やタオルで手足を冷やす
・クールベストを着用する
大切なのは、暑くなってから慌てて冷やすのではなく、暑い場所へ出る前から身体に熱をためないことです。
ただし、プレクーリングは万能ではありません。水分・塩分補給、休憩、エアコン、日傘や帽子、暑さ指数の確認と組み合わせ、危険な暑さの日は無理に外出や運動をしないようにしましょう。
大阪・心斎橋へお出かけの際も、移動前から身体を冷やし、飲み物を持って、無理のない行動を心がけてください。
監修:山本 政幸
柔道整復師・鍼灸師
グレフル鍼灸接骨院・整体院 心斎橋
当院では、日常生活やスポーツを健康的に続けていただくため、身体のケアだけでなく、季節に応じた健康情報も発信しています。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものです。体調に異変がある場合は、自己判断で無理をせず、医療機関へご相談ください。
厚生労働省「自分でできる熱中症予防」「導入しやすい熱中症対策事例紹介」
環境省「熱中症予防情報サイト」
総務省消防庁「熱中症への対応」
日本スポーツ協会「熱中症を防ごう」